カレー味の走れメロス!?~RRRの感想~
こんにちは、逆張りオタクのあらんです。
初めてのブログですがやること・テーマは単純で見た・やった・買ったエンタメに関して正直な感想をぶちまけていこうと思っております。
当然いいことも言いますし悪いことだって言いますがそれでも良ければ見てもらえればなと思います。
さて、第一回はRRR。
何かと話題のこの映画ですがインド映画だしどうせダンスで終わりやろなぁ……。
そう思ってた時期が僕にもありました。
これから見る人向けに非ネタバレの感想と、見た人向けの感想に分けて書いていきます。
あらすじ(公式より抜粋)
舞台は1920年、英国植民地時代のインド。
英国軍にさらわれた幼い少女を救うため、立ち上がるビーム。
大義のため英国政府の警察となるラーマ。
熱い思いを胸に秘めた男たちが運命に導かれて出会い、唯一無二の親友となる。しかし、ある事件をきっかけに究極の選択を迫られることに。彼らが選ぶのは友情か?使命か?
非ネタバレ評価・感想
超ド派手な「そうはならんやろ」アクションとイカれたCG技術
やはり圧巻のアクション・スタントとCGのド派手さが目につくだろう。
RRRはアクション映画の側面が強い。
先に話してしまえばアクション・スタントの満足感があまりにも高すぎる。そのおかげでこの後何が起こるのか、という期待感が高まった上でそれを軽々と上回ってくる。
最初のラーマ対大群衆の大捕り物は凄まじいの一言だ。千人は超えているであろうエキストラにたった一人で飛び込み、総統の写真を割ったデモ民を捕まえるシーンが最序盤にある。
このシーンは主人公の片割れ、ラーマの異常なまでの身体能力……要するに「こいつクッソ強ええwww」ということを印象付けられる。
そしてもう片方の主人公ビーマは虎を森林で捕らえるシーンも印象的だ。ラーマと同じくビーマの怪力と俊敏さを上手く伝えるアクション・カメラワークが素晴らしい。しかしこのシーンはそれだけでは無く虎がハイクオリティなフルCGで飛び回り、実際に虎を使っているんじゃないかと錯覚するほどだ。
そして主人公二人の出会いのシーンもまたド派手で、燃え上がる川に爆発する蒸気機関車、そして二人で川に飛び込み川に取り残された少年を救うシーンもまた素晴らしかった。
無論、これらのシーンは序盤も序盤。他にも注目のシーンはたくさんあるので是非自分の目で確かめてみてほしい。
尺の使い方がうまい構成
本作品は映画では珍しい章立ての構成になっている。自分が見た中でパッと浮かぶものはガイリッチー監督作の「キャッシュトラック」くらいなものだ。
そもそもの話、1本の映画で章立て構成をするのは相当難しいと思っている。1本で1章を描き、複数本撮影して物語を完結させるというものは多いのだが(もちろんこれらはヒットすることがまずの前提ではあるが)1本で複数章を立ててしまうと尺足らずになってしまうことが多い。映画には三幕構成という王道の手法があるが、章立て映画はこれとはまた少し外れた技と言えるだろうか。
しかしRRRは3時間という尺(!?)をたっぷり使い、3つの章を作ってそれぞれのキャラクターの魅力を丁寧に描き切っている。
第一幕はビーマの不器用さと勇猛さ、そしてラーマとの友情の芽吹きと決別にフォーカスを当てて、この時点ですでに一本の映画並みのクオリティを誇る。
第二幕はラーマの生い立ちと決意を描き、次の最終章に対する導火線としてこれ以上ない役目を果たしている。
最終章はひたすらに激熱展開の連続、まさしく少年漫画のようなテンション。ラーマとビーマが手を取り合い和解し、イギリス軍にに立ち向かう。詳しくは劇場で(言いたいだけ)。
中毒になりそうな音楽
インド映画と言えばやはりダンス……なのだが、そのクセというかアクが強いのかあまり日本では見られることが無いとも言える。
ネットミームで有名なBGMに合わせて……おジャ魔女カーニバルとかT.M.Revolutionとかを音割れで踊る動画は見たことあるけどインド映画を見たことないってヤツ、大人しく出てきなさい。自分です(懺悔)
だがRRRは躍る場面がエンディングを除き1か所しかない。しかし、その躍る場面「ナートゥ」はぬるっと違和感なく入った上に一度聞けば忘れられないほどにメロディーが濃い。一時はネットミームになったほどだ。
そしてRRRはミュージカル映画としてのエッセンスもあり、作中でも音楽は大きな役割を果たしている上に印象に残るシーンは多い。大迫力のアクションと合わさればまさしくエンタメの暴力と言える。
機会があれば本当にこれはスクリーンで見たかったと思ったほどだ。
総評
この映画は傑作である。
正直インド映画舐めてた。インド映画と言えばアホみたいに躍るだけだと思っていたけれど、価値観を徹底的に破壊された。
……なんなら、本音を話せば拗らせオタクが触れてきたコンテンツの中でも相当上位に入るものだ。
製作陣の「いいものを作ろう」という熱量がひしひしと伝わってくる、ということの心地よさがクライマックスまで続くと視聴後が清々しいまでに心地が良いものである。
一言でこの映画を纏めるとすれば「エンタメってこういうのでいいんだよ、こういうので」が、まさしくふさわしい。
……自分の意見を述べるとすれば「少年ジャンプ版・走れメロス~カレー風味~」なんだけれども。
見逃した、見ればよかった!
と、言う方はAmazonVideoで500円で借りられるので是非。
また7月28日には吹き替え上映も始まるRRR、前年10月からのロングランだがここからさらに躍進を続けるのか。今後にも期待である。
さて、以下からはネタバレを多分に含んだ感想になる。
上の記事で興味を持って実際に見てみた人orすでに視聴した人のみ通るべし。
ネタバレ感想
実のところ、上で書いた評価は本音ではある。
しかも語ればもっと深い評価点は多々出てくる本当に良い映画だ。
ただ、この映画に思わないことが無いわけでもないのもまた事実。
そんなわけでここから先は自分の意見をさらにおもくそにぶちまけていく。
思った点は4つ。
神話リスペクトで細かいネタに気づけたらホクホクする映画
今のハリウッドには恐らく作れないような攻めた内容
丁寧に回収される伏線と逆にクソガバガバなB級度合
唐突なプロパガンダによる困惑
さて、一つ一つ見ていくとしよう。
神話リスペクトで細かいネタに気づけたらホクホクする映画
主人公たちの名前から分かるように実は元々ラーマ・ビームはインド神話の人物。
ラーマは「ラーマヤーナ」、ビーマ(以下はビーム)は「マハーバーラータ」に登場する人物だ。
ちなみに歴史人物のスマブラことFGOにも2人は出ていたりする。裏を返せばそれくらいの知名度がある人物ということだ。
ラーマの許嫁はシータというのも伝承通りであり、黄金の弓を持っていたりとまさしく原作再現がふさわしい。
ビームは最終シーンでもあるように槍使いであり、シーンこそラーマと逆であれど毒に侵されてうなされる逸話もある。
と言ったようにちらほらと神話リスペクトが見て取れる。
また二人はシヴァ神とも関りがが深い。
ラーマはシヴァ神の化身とされるハヌマーンと関りがあり、ビームはハヌマーンと相対した逸話がある。
そしてその二人が肩車をして戦うあのシーン。
初めは確信が無かったが、四本腕で見張り台に登るシーンを見て「あ、これ二人合わさったら最強(シヴァ神)ということを示してるんだな」と納得がいった。
……お判りいただけただろうか。
これ以外にも自分の気づかない場所でオマージュのあるシーンは多々あるようなので、インド神話を専攻している人と見てみるのも一興だろう。
今のハリウッドには恐らく作れないような攻めた内容
これは最後に語るプロパガンダとも重なる点ではあるが、良い点でもある。
映画で出てくる敵(国)は大抵どこだろうか、と考えてみればアメリカ・ナチス・ソ連あたりがぱっと出るだろうか。
しかしアメリカという国が敵の映画は大体が内ゲバ(テロリスト側視点だったりFBIとかが敵)だったり、ナチスやソ連は敗戦国だしオモチャである。そういう意味では多少戦前の日本もオモチャにされていることが無いわけでもないような。
そして敵にしてはいけない国、っていうのが多分あると思っていて(対立煽りによる国際問題にもなるし)恐らく国連常任理事国がそれに該当しやすいだろうと思う。
例えば、初代トップガンでは敵国はソ連だったがマーヴェリックでは敵の国が語られなかったりもする(ロシアを現代で敵に出来ないから)ような例などが具体例だろうか。
で、このRRRを見てもらえれば分かるのだがイギリスヘイトがとんでもない。
イギリスはもちろん常任理事国だし、何なら敵として描かれる映画はそう見たことは無いだけにこの視点は斬新だった。
インド独立の話ではあるが、ビーム・ラーマは神々を元ネタにしただけでなく実在の人物でもある。
ラーマ・ラージュ(1898~1924)
正式名称アッルーリ・シータラーマ・ラージュ。
イギリスの植民地支配に対して先住民を率いてゲリラ武装し武力で革命を試みた英雄。特殊部隊に捕まり銃殺刑
コムラム・ビーム(1900~1940)
ゴンド族の革命家。
反乱軍を従えていたが武装警官により銃殺されてしまう。
……映画を見てもらえれば分かる通り、二人は生き残ってハッピーエンドなのだがモデルは死んでいる。
要するにRRRはインド革命のIFの映画とも言える。
歴史改変モノはちょいちょい物議を呼ぶし、ましてやこれをイギリスでやるとなるとそれはもう風当たりが企画段階で強くなるだろう。それを通せたのは間違いなくハリウッドから離れたインドのお国柄と言えよう。
不謹慎、不敬はなんのその、面白ければ何でもいいんだよ精神。
おいら嫌いじゃないよ。
丁寧に回収される伏線と逆にガバガバなB級度合
この映画は伏線が丁寧だ。
序盤に虎を捕まえていたのも途中のサーカステロでの大襲撃の為だったし、細かいものを見ればもっと多々あるだろう。
しかしやはり美しく伏線を回収し、セリフの意味を深めたのは「銃弾の価値」だろう。
七つの海を越えて輸入した銃弾よりもインド人の命の方が安いと考えるイギリス軍に対し、一発の銃弾はイギリス人の命を奪うために温存しなければならないと考えるラーマの父。そしてその遺志を継ぎ、成り上がり武器をを手に入れようとするラーマ。
この対比は見事であるし、物語冒頭で出た何気ないセリフな事に対して状況への説明や物語の根幹にすらなり章を跨いだのは驚きを隠せない。
3時間になったとはいえ映画でこれだけストンと落としたのは本当に見事と言えるだろう。しかし、その反面で笑いを堪えられないクソほどガバガバなB級っぷりも両立しているのがこの映画のポイントでもある。
前のシーンまで、全身を骨折し肩車されて戦っていたラーマ。
そしてビーマがその辺に生えてる薬草をぬりぬりすると……
なんと全快して弓を持って無双し始めるじゃないですか。
さすがにアレはガバガバすぎて死ぬほど笑ったよね。
このほかにもラーマが不覚を取り毒に侵され、「イギリスでも薬を開発できない蛇の毒」と前のシーンで丁寧に描写していたのにビーマがその辺に生えてる草で治療して回復したりする。
なんとインドの野草はドラクエの「せかいじゅのは」だったのだと言わんばかりに薬草さんの大活躍である。
他にも上げればキリが無いがもう途中から突っ込むことをやめた、だって頭空っぽにして見る映画だもの。
……エンタメってこういうのでいいんだよ、っていうのはホント勢いだけで乗り切れるんだなぁと。
唐突なプロパガンダによる困惑
この映画唯一にして最大の欠点。
それはエンディングで唐突にプロパガンダが始まることだ。
いやほんと北朝鮮のテレビ番組みたいによくわからんインド革命の指導者たちが出てくるのは悪い意味で笑わずにはいられなかった。
イギリスヘイトと合わせるとまーーーーー思想が強いこと。
……これは多分日本人の感性に合っていないんだろうなぁと思ったし、ある程度は仕方のない事なのかもしれない。かなりインド独特のクセとアクを抜いて世界に売りに行ったRRRだがまだまだ抜けていないのかなぁ、と思わないでもなかった。
だけどあの凄いものをみた、と頭が真っ白になっている感覚からこの爆笑プロパガンダを流されると口がポカーンと開きっぱなしになってしまった。ある種視聴後の心地よさを妨げるテロに近いとも言えるし、最後まで予想のつかないぶっ飛びっぷりを見せつけたとも言えるのだろうか……。
最終評価
10点満点でつけるならば9.5点。
ガバガバ度合いには目をつむるにしても限度のある場面もあったし(ヒロインとか主人公たちに両親殺されてるのにニッコニコだったりするし)最後のプロパガンダはやはりいただけない。
とはいえ頭を空っぽにして見る映画としては最高峰の傑作であり、素晴らしい出来だ。拗らせたオタクでも滅茶苦茶爆笑して見れた。
以上でRRRの評価は終わり。
次回があればまた読んでくれたら嬉しいです。
読んでくださりありがとうございました。
*1:よく歴史改変モノをやる監督。